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「くすくす…何を怯えてるの?」
カイルが見つけた黒い影の正体がチョコンと立っていた。片端を後ろに引きサテン地の綺麗なお洋服を着て、愛くるしい表情の頬には僅かに紅を差して…瞳はガラス玉のようなキレイなiceblueである。髪は金髪を緩くウェイブしている。
「君は…誰だい?」恐る恐る指を下ろして相手に近づき身を屈めた。
「あら…レディに対してのご挨拶はなし?」
キョトンと見つめる二つの瞳…カイルはとっさに小さなレディに対して手を取り小さな甲に軽い口付けを施した。
「ありがとう…ここに人が来るのは久しぶりですわ…私の名はエミリー宜しくね?」
「僕は…カイルだ。いやこんな塔にこんな可愛らしいレディが居るとは…あれ?部屋こんなに明るかったかな?」
いつの間にか部屋は暖かな暖炉の灯りと明るい部屋の中は埃…塵一つ無い。
「私のお城へようこそ…ずっとお待ちしてましたわ。カイル…って呼ばせてね?」
「あぁ…エミリー宜しく…僕は此処の屋敷の次男坊だょ…今は兄が実権握ってるけどね」
「そう…カイルも孤独なのね私と一緒だわ寂しかった…ずっと一人で誰も来ないまま長い年月が過ぎたもの」
「でもエミリーは可愛いよ?…レディに歳を聞くのは野暮かな?」
「今年で11歳よ?…毎年誕生日にはお父様がケーキと可愛いお人形と素敵な時間を下さったわ…でも」
突然表情を曇らせて言う。
「でも?」
「急に来なくなったの…エミリーを置いてどっか行っちゃった」
肩を揺らして手で顔を覆い泣き出しました。
「エミリー?今日からは僕が居るよ?…そうだ屋敷には人が居るから…行こう?」
エミリーは首を左右に振り否定をする。
「どうして?」
エミリーはそっと手をどけて真っ直ぐにカイルを見つめて言いました。
「私は今まで…ここから一歩も外に出たことが無いの…」
「そんな…」
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