哀愁─その始まりは

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僕の有無など言おうとさせない、手を掴む様。 か細く白い肌に掴まれている僕の手も白い。 ちょっと、驚いた。 僕の手、こんなんだったんだ。 「行くよっ」 女は元気よく走り出す。釣られて僕も走り出した。 「うわっ」 人間に掴まれている。あり得ない。僕は妖狐なのに。 この女は勘づいているのだろうか。 女は夢中に走り続け、話すことを止めた。はぁ、と息が切れる声しか聞こえない。 その代わり、風が切るのを肌で感じていた。 …不安はある。疑心もある。なのに、この手を払い除けることをしない。いや、出来ない。 僕は人間と友達になれるのではないかと、期待をしていたからだ。 期待が期待として大きく膨れ、望んでしまった。 例え、僕が妖狐だとしても、受け入れてくれるのではないかと。 心の片隅では違うと思っていても。
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