哀愁─その始まりは

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何と可愛らしいのだろう。姿は一丁前に麗しい大人の女なのに… クスリと笑いを浮かべ、空いている片方の手を女の頭へと撫で使った。 「ありがとう、桜」 桜は照れながら満面の笑みを立てるもんだから、僕の不安は何処(イズコ)へと飛んでいった。 暫く、沈黙が続いた。彼女は歩きながら上を見たり、僕を見たりと変な動きをする。 そんな姿が愛らしくて見えて、こんな女にはたくさんの殿方が見初めるに違いない、と思った。 「あ、そうだ。御影(ミカゲ)って言う名前はどうだろ?」 「御影…?」 「そう、御影」 僕は知り合ったばかりの彼女から名前を付けて貰った。 御影という、どんな意図で付けたのか不明な名前だが。 「良い、響きでしょ?」 それでも良いと思った。 「うん、良い響きだね」
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