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何だかんだで、手を繋ぎながら歩いてやって来た。
─…屋敷に。
建物は行く道中に見てきたのと同じようで、然程驚きはしなかった。
馴れたように屋敷に上がり、部屋へと進んで、彼女にある一室に連れてこられた。
「ただいま、帰りましたぁ!」
その一室にいる人を彼女は見つけた途端、犬のように飛び付いて行く。
……暗い中でよく、見えたな。
彼女は主人に会いたかった、寂しいかったと言う飼い犬だ。
僕はただ、どうすることもなく黙って見つめる。
「おかえりなさい、桜」
「はーい、晴明様」
晴明と言った男に抱きつく桜は、幸せそうに目を瞑らせて寝息を発てた。
疲れたのか…
「狐、」
男の声色が先程と違う。
ピンとはりつめた空気に自然と背筋が伸びる。
「ふふ、緊張しなくてよろしい。取り合えず、座りなさい」
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