哀愁─その始まりは

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今日は満月。光を浴びて人間の姿になっている僕は覚束ない足取りで歩く。 何せ、久しぶりに人間の格好なんだ。 歩む速度は遅くとも、着実に進んでいるなら構わないんだ。 歩み始めた真っ暗な帰り道、いろんな混じった匂いがする。 獣臭い匂いや、腐った匂い。どれも嫌いな匂いだ。 でも、たまに花の甘く優しい匂いが紛れている。 その匂いを嗅げた時は、嬉しくなって、嬉しい気持ちを抱えたまま就寝出来る、…─僕の小さな幸せだ。 カサカサ… 草が風に揺れる音が変に大きく、匂いも強くなる。 辺りを見回す。横、後ろと。だが、何の気配は感じられない。 気のせいか? でも、さっきに嗅いだ匂いは混じれもなく気配を感じられる匂いだった。 神経質に気にし過ぎ何だろうかと思って、前を向き、ため息を吐いた時。 姿は現れた。
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