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また、風が強く吹く。
女の髪が四方八方と揺れ、月のせいか、色艶やかに照らされている。
綺麗な顔をしているのに、似つかわしくない哀しそうな瞳で見て、哀愁を漂わし、仄かに色気が出ていた。
「…─そんな、顔、しないでよ」
そんな顔、とは一体…?
自分の顔を見たことがない僕は首を傾げ、自身の顔に触れた。
えー…、これが鼻で頬で口でと一つ一つ顔の部分を触り、確認する。
「自分の顔、見たこと無いの?」
こくりと頷くと、女はくすりと微笑み、僕に近付いて手を掴む。
「じゃあ、私の住んでる屋敷で貴方の顔を見せてあげる」
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