【一章】

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「最初は何処へ行く?」 「他の国々を周り、状況を把握したいと思っています。まだ、壊滅していないのであれば」 「私の国に行きましょう」  フリンと女禍の会話に割って入る声。夜でもわかる碧色の髪と小さい体には似合わない眼力。スカアハとの一戦で見た顔だったが、はっきりと覚えていなかった。 「お前は誰じゃ」  女禍が凄みを効かせて詰め寄ろうとする。しかし、腕組みをすると女禍を睨みつけながらフリンに歩み寄った。 「私はヴァナデ・ニョルズ・フレイア。フレイヤと呼んで? クー・フリン、貴女は私が守るわ。安心して」 「待て、主は奴らの力を知らぬのだろう?」  フリンとフレイヤの間に女禍が入ると、また睨み合いを続ける。見かねたフリンが咳を一つ吐くと互いに舌打ちをして目を逸らした。 「私は貴女みたいな神気取りが嫌いだわ」 「気取りではない、神なのだ」 「じゃぁっ! この世界をっ! 今の状況を何とかしなさいよ?! ラグナロク聖戦の原因は神界人と亜人が始めた事だと思ってるだろうけど、そもそも貴女達神と呼ばれる者達がクロノスにやられたのが原因でしょう?!」  フリンはフレイヤの言葉に驚き、肩を掴んでいた。フレイヤも驚いたようにフリンを見ると、目を逸らしてしまった。 「フレイヤと言ったか? 今のは本当か?」  少しだけ女禍に目を向けた後、小さく頷くフレイヤ。肩から手を離すと、フレイヤはフリンを見直し、口を開いた。 「原因はクロノスがオケノアスを殺した事にあるわ。本来、神の子であるクロノスが神を殺める事は出来ない。だけど、クロノスはそれが出来た。書記によると、クロノスは神界人にして異端児で神の力を受け継いで生まれた子だった。ただ、それは有り得ない事らしいけど、遺伝子異常により生まれてしまったらしいわ。」 「それはどんな?」 「違う……」  フリンとフレイヤの会話の間に呟くように声を上げたのは女禍だった。腕を組んだまま、俯き加減に下唇を噛む。ため息を吐くとフリンだけを見据え、口を開いた。
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