あわ

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僕が生まれてすぐ、助産師は異変を感じたと言う。 何人、何十人と赤子を取り上げて来た時と明らかに違う点があった。 臭いだ。 洗濯機を開けた時よりも濃く、食器を洗う時よりもつよく、 なにか、洗剤のような、石けんのような臭いがしたという。 そして、その赤子は産声と共に 口からシャボン玉を生み出した。 ひとつではない。鳴き声をあげるたび、いくつも、いくつもだ。 あっけに取られているうちに、部屋の中はシャボン玉だらけになった。 大仕事を終え、ようやく息を整え我が子に目を向けた母は、 周囲より少し遅く、その異変に気がついた。 視界の端々に写り込むシャボン玉。 その発生源が我が子だと知ったとき、彼女は自らの意識を手放した。
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