衝動

9/40
11305人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
――冷静に、なれない どのくらいの時がたったのか、睡眠もろくにとれなかった一日のせいで、体力の限界。 久しぶりの成田の身体に、心は素直になれなくても 俺の身体は正直で。 まるで、褒美を与えられて喜ぶ犬みたいだ。 静まりかえった部屋に響く、成田の息切れた呼吸音 フルマラソンでもしたのか、ってくらい 激しく鼓動は鳴り響いているのに、やせ我慢で息をととのえるオレ。 ぐたりとした成田の身体を引き寄せて、濡れて乱れた髪をときほぐす 微妙な空間 二人とも、言葉を口にしないで、身体を休めた それがこっぱずかしくて、動かない成田をベッドに残して ざわついて整理できない心を落ち着かせようと、 窓際のテーブルに腰をおろして、煙草をくわえた 吸い込んだ煙を吐き出した瞬間 浮かんだのが、成田の、鳴く声。 「……くっ」 「……な、なに」 ベッドの上から、焦った声が聞こえてきた ――ヤバイ、 今さら。 ――きた。 「……ヤダ、って。何回言うわけ、お前」 成田の、癖。 久しぶりに聞いて、――やっぱりツボるわ、って なんだオレ。すんげぇ好きだわ。 成田の、全部。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!