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――冷静に、なれない
どのくらいの時がたったのか、睡眠もろくにとれなかった一日のせいで、体力の限界。
久しぶりの成田の身体に、心は素直になれなくても
俺の身体は正直で。
まるで、褒美を与えられて喜ぶ犬みたいだ。
静まりかえった部屋に響く、成田の息切れた呼吸音
フルマラソンでもしたのか、ってくらい
激しく鼓動は鳴り響いているのに、やせ我慢で息をととのえるオレ。
ぐたりとした成田の身体を引き寄せて、濡れて乱れた髪をときほぐす
微妙な空間
二人とも、言葉を口にしないで、身体を休めた
それがこっぱずかしくて、動かない成田をベッドに残して
ざわついて整理できない心を落ち着かせようと、
窓際のテーブルに腰をおろして、煙草をくわえた
吸い込んだ煙を吐き出した瞬間
浮かんだのが、成田の、鳴く声。
「……くっ」
「……な、なに」
ベッドの上から、焦った声が聞こえてきた
――ヤバイ、
今さら。
――きた。
「……ヤダ、って。何回言うわけ、お前」
成田の、癖。
久しぶりに聞いて、――やっぱりツボるわ、って
なんだオレ。すんげぇ好きだわ。
成田の、全部。
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