契り交わす時(前編)

11/24
前へ
/32ページ
次へ
今から行けば夜までには着くな。 「有り難う御座います。」 「では、着いてきてください。」 刀を持ち立ち上がり、 玄関に降りながら草履を履く。 先へ進む善蔵さんに着いていき、 馬小屋へ行く。 そこにいた小姓に善蔵さん何かを話すと、 小姓は一頭の馬を手綱を引いてつれてきた。 「どうぞ。」 そう言うとその人は、 手綱を僕に渡してくれた。 「では、善蔵さん。僕はこれにて失礼します。」 「あの!!なにとぞお願いいたします。」 手綱を引き去ろうとする僕に、 善蔵さんは深くお辞儀をした。 「善蔵さん、依頼は必ず成功させますのでご安心ください。」 そんな言葉を残し、伊藤屋を後にする。 晴天の空のもと、馬を連れある所へ向かう。 往来する人々を見ていると、 娘を想う善蔵さんの姿を 見たときの気持ちを思い出す。 親とはあんなに子を想うものなのか… 今は嫉妬や羨望が混在した様な気持ちだ。 気の迷いが死を招く。 そんな言葉が脳裏に過ぎり、 この事を考えても無駄だと、考えに蓋をした。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加