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「しかし、お前さんも物好きだねぇ。
報酬の少ない人助けの依頼ばかり取って、
しかも助けた人達の今後のことも気にかけてさぁ。
今回の依頼だってそうだ。
夜盗共に捕らわれていた人達に
その報酬の殆どをあげるんだから……
こんな時代にあんたみたいな人はいないよ。」
壁には字の書かれている紙が所狭しと貼られ、
床にも紙が散らかり、目の前には紙が
山積みになり表面の見えない机がある。
その向こうに座っている男は、
煙管の煙を吐きながらそう言った。
「そんなことより依頼完了手続きだったね。
よし、暁玄!!
報酬は小判3枚だね。ほれ!!
っで、また何か依頼を受注するかい?」
男は小判の入っているであろう袋を、
紙の山越しに投げてきた。
その男は腰まである長髪を後ろで束ね、
肌の色は女人のように白く、顔は綺麗に整っている。
声を聞かなければ、女の人と言われても
納得してしまう容貌の持ち主である。
「ありがとうございます、夜吉さん。
そうですね、この中で報酬の良いのはなんですか?」
夜吉は少し驚いた顔を見せ、
煙管の燃えカスを鉢に落とす。
「あらあら、不思議だね。何か入り用なのかい??」
「まぁそんな所です。」
「ちょいと待っておくれよ。
そこに掛けといていいから。」
僕は玄関近くの畳の縁に腰を掛け、
夜吉さんがあれこれと探す姿を見ていた。
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