契り交わす時(前編)

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───── ─── 「しかし、お前さんも物好きだねぇ。 報酬の少ない人助けの依頼ばかり取って、 しかも助けた人達の今後のことも気にかけてさぁ。 今回の依頼だってそうだ。 夜盗共に捕らわれていた人達に その報酬の殆どをあげるんだから…… こんな時代にあんたみたいな人はいないよ。」 壁には字の書かれている紙が所狭しと貼られ、 床にも紙が散らかり、目の前には紙が 山積みになり表面の見えない机がある。 その向こうに座っている男は、 煙管の煙を吐きながらそう言った。 「そんなことより依頼完了手続きだったね。 よし、暁玄!! 報酬は小判3枚だね。ほれ!! っで、また何か依頼を受注するかい?」 男は小判の入っているであろう袋を、 紙の山越しに投げてきた。 その男は腰まである長髪を後ろで束ね、 肌の色は女人のように白く、顔は綺麗に整っている。 声を聞かなければ、女の人と言われても 納得してしまう容貌の持ち主である。 「ありがとうございます、夜吉さん。 そうですね、この中で報酬の良いのはなんですか?」 夜吉は少し驚いた顔を見せ、 煙管の燃えカスを鉢に落とす。 「あらあら、不思議だね。何か入り用なのかい??」 「まぁそんな所です。」 「ちょいと待っておくれよ。 そこに掛けといていいから。」 僕は玄関近くの畳の縁に腰を掛け、 夜吉さんがあれこれと探す姿を見ていた。
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