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なんやかんや、素直じゃない奴やけど、
すんげぇ気ぃ遣いぃやし、
こじ開けてやりたかった。
それは俺の、自己満足やったんやろうか。
「…ほんなら、迷惑やった、ちゅーんか…」
言葉に出すのも、辛い。
情けない位、覇気を失った声が出た。
「俺が、あいつと一緒に居ったら、楽しそうにしてくれてるって思ったのは、俺だけで…興味本位の同情やとでも、思われとったんか…?」
「…いや、せやなくて」
「お前は知ってたんか?あいつが何考えてるんか」
「ちょー、あんな、聞いて。」
矢継ぎ早に質問だけをぶつける俺を、純平は必死になだめようとする。
さっきまで怒ってたはずなのに、
今は半ば呆れ顔だ。
「あたしが知ってたら、教えたら良かったんか?」
「………」
「それも、ちゃう話やろ?」
「……そう、なんか…?あぁもう判らん」
陽太。
走って何処へ行くんや。
お前、あんだけ俺の前で笑てたのに、
腹の中で何考えてたってゆーんや。
俺が傍に居ると、しんどいんか。
何で大事なことは言われへん。
俺のこと信用できへんのか。
項垂れて、頭の中に様々な疑問が渦巻く。
「…俺は、なんや、陽太に、いらんことしたんか…?」
「当たらずしも、遠からず、ってとこか。」
「なぁもう、教えてくれや!俺謝らなあかんやんか!」
「あのな…よぉぉぉく、もういっぺん、考えてよ。」
人差指を立てた腕が差しだされた。
手首には重たそうな数珠みたいなアクセサリーが何重にも着けられている。
動きとともに、張り詰めた空気の中で、ジャラッと音を立てた。
長い爪は、俺の眉間を指してるに違いない。
「何で、今まで、あの子が、人と…男の人と、距離を取って生きてきたか。」
「……距離…」
「男を愛してまうタチやから、そうならんように、閉じ込めて閉じ込めて、やってるんとちゃうの?」
「………」
「そんな中で、あんたが楽しそうに踏み込んで来てみぃ。」
「………はっ?」
「優しくされてみぃ。大切にされてみぃ。どうなるん。」
「陽太が……」
優しくして、大切にして、
そんな当然な俺の気持ちが、あいつにどう届いていたか?
当然過ぎて考えもしていなかった。
頭を抱えようとして、
自分の掌をふと見つめた。
そうだ、この手は、
陽太の手と重ねたことがあった。
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