第二話

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午前中は暫く事務所で内勤、 12時になるちょっと前から外回りに出かける。 これがほぼ毎日お決まりの行動パターン。 時々朝からミーティングだのが入ることもあるが、 今日は特に何もない、平和な週末だ。 パソコンに鬼のように届いているメールを、一先ず件名だけでフォルダ毎に振り分けながら、ちらりと顔を上げてみた。 塚口さんが、自分のチームの人たちと立ったまま話をしている。 やっぱり、昨日見たアレは、別人やったんとちゃうか… その方が、お互いの為にいいかもしれへん… 溜息を一つ、俺はまたパソコンに目線を落とした。 好きなタイプは?と聞かれ、 本音で話すなら真っ先に名前を上げるのは、男優だ。 だから俺はホンモノだと思う。 自覚はあるが俺はどちらかというと、可愛い系の顔をしている。 はずだ。 だから男ともし付き合うことがあれば、女役なんだろうなと確信に近いものはあるし、 そうしてほしい。 まぁつまりはそういう人種なわけで、 だけどそれは、男だらけのこの職場で曝け出すべきものではない。 それどころか家族も、学生時代の友人たちも、知らない。 なんか、嫌やん 巻き込んじゃうの 最初からそういう目で見ないように、見ないようにと心に決めてから、 特に職場は割り切って過ごしてきたつもりである。 上司は上司、同僚は同僚、それでOK、 それ以上でも以下でもない。 なるべく接触しないでおこうと思っていたから、 飲み会も、事務所全体の、新年会とか歓送迎会とかイベントの時には参加しても、その場のノリで仲良い人間だけでってのにはあまり行っていない。 その分俺はルチルに行って発散していたし。 …まぁ、要するにや、 俺は昨日、結構とんでもないものを見てしまったのかもしれない。 紅く染めた頬、 潤んだ瞳、 汗ばんだ首筋、 乱れた髪、 荒い息、 以上を、今5mくらい先で凛と立ってらっしゃる御方が晒してくださいまして、 それはもう、 そういう視点から見たことが無かったもので、 改めて俺は塚口リーダーを凝視してみたが、 困っちゃう位男前なんですけど。 あーやめてくれーやめてくれー あかんあかんあかんよー 意識し始めたら、止まらないやつやでこれ 俺がデスクで頭を抱えている間に、いつの間にか塚口さんは営業に出てしまっていた。 あ、今夜、飲むのか。うっわ
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