第一話

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ふらふら~と席まで歩いてきて、塚口さんは椅子に腰かけると「ビール。」とやや舌足らずにオーダーしている。 おいおいおいおい、どうした、 そういえばこの人と飲んだことはあまりない。 同じ営業所だが、細かく言うと違うチームなのだ。 だから直属の上司ってわけでもないんだが。 「り、リーダー、何で、ここに…」 声を掛けるが、塚口さんは眠そうに首をもたげて深いため息をついている。 代わりにジュリアがコースターとおしぼりをカウンターに設置して、 ビールグラスを優雅に置きながら俺を見つめた。 「…この人、あたしの同級生やねん。小・中の。」 「うえぇぇ!?」 にっこり笑うジュリアと、塚口さんを交互に見る。 どこから驚けばいいのか。 塚口さんは、30を過ぎているのは知っているが、 つまりそれと同い年のジュリア… ジュリア、あんたすげぇよ、綺麗だよ。 じゃなくて、 そう、この上司だ。 ちょっとくせ毛なのか、全体的に軽くウエーブがかった髪は、 いつもはばっちり後ろに流して固められている。 なのに今は、一体何が起こったのかわからないほど、乱れている。 何事だ。 塚口さんはカウンターに突っ伏したまま、動かない。 というか、寝息が聞こえてきた。 「リーダー、ビール来ましたよ。」 「…ん~…」 揺さぶっても顔を上げることは無い。 ジュリアは至って冷静で、穏やかに笑いながら塚口さんを見つめている。 「今日はだいぶ飲んできたんやろなぁ」 「…結構、ここ来てるんですか?」 「たまにね。そっかぁ陽太君とは、うまいこと入れ違いやったんやろなぁ。」 「そんで、いつも、こんな感じ、ですか?」 「せやね。」 すぱっと言い切るあたり、本当なんだろう。 想像もできなかった。
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