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ふらふら~と席まで歩いてきて、塚口さんは椅子に腰かけると「ビール。」とやや舌足らずにオーダーしている。
おいおいおいおい、どうした、
そういえばこの人と飲んだことはあまりない。
同じ営業所だが、細かく言うと違うチームなのだ。
だから直属の上司ってわけでもないんだが。
「り、リーダー、何で、ここに…」
声を掛けるが、塚口さんは眠そうに首をもたげて深いため息をついている。
代わりにジュリアがコースターとおしぼりをカウンターに設置して、
ビールグラスを優雅に置きながら俺を見つめた。
「…この人、あたしの同級生やねん。小・中の。」
「うえぇぇ!?」
にっこり笑うジュリアと、塚口さんを交互に見る。
どこから驚けばいいのか。
塚口さんは、30を過ぎているのは知っているが、
つまりそれと同い年のジュリア…
ジュリア、あんたすげぇよ、綺麗だよ。
じゃなくて、
そう、この上司だ。
ちょっとくせ毛なのか、全体的に軽くウエーブがかった髪は、
いつもはばっちり後ろに流して固められている。
なのに今は、一体何が起こったのかわからないほど、乱れている。
何事だ。
塚口さんはカウンターに突っ伏したまま、動かない。
というか、寝息が聞こえてきた。
「リーダー、ビール来ましたよ。」
「…ん~…」
揺さぶっても顔を上げることは無い。
ジュリアは至って冷静で、穏やかに笑いながら塚口さんを見つめている。
「今日はだいぶ飲んできたんやろなぁ」
「…結構、ここ来てるんですか?」
「たまにね。そっかぁ陽太君とは、うまいこと入れ違いやったんやろなぁ。」
「そんで、いつも、こんな感じ、ですか?」
「せやね。」
すぱっと言い切るあたり、本当なんだろう。
想像もできなかった。
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