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塚口さんと言えば、若くしてリーダーになった、出世街道まっしぐらのどう見ても仕事のできる男だ。
背も高いから佇まいも凛としていて、
顔も、ノーマルな同性から見ても、男前の部類。
仕事ができると、付き合いも増える。
つまり飲みの席も、俺のような平に比べて多く、激しいに違いない。
「…あの、これ、起きるんですか?」
上司を指で差しながら、カウンターの中のジュリアを見上げた。
「さぁどうやろなぁ。今日くらいまで飲んでたら、…難しいかも。」
「って、そしたらどうするんですか!」
「ん~、大体はうち連れて帰るか、朝まであたしもここに居って、起こして会社行かすか、やな。」
「………!!!」
それは、どうなん。
人として、大人として、どうなん。
同級生で信頼が置ける人間かもしれないが、
ジュリアだってどう考えても男を喰う側だし(喰われると言った方が良いかもしれないが)、こんな場所で寝こけていて上手いことお持ち帰り?連行?拉致?される可能性だって無きにしも非ず。
それってどうなん塚口リーダー。
無防備にも程があるでしょ。
良く考えろ俺、
明日は金曜日、勿論仕事だ。
時刻は間もなく午後11時。
俺もこの人も、行動パターンに大差はないはずなので、朝8時には家を出たい。
この人の家も、事務所からそう遠くは無いはずだ。
つまり俺の家からもそう遠くは無いはずだ。
こんな無法地帯に放置して帰るよりも、
安全な策が、無いわけではない。
携帯の画面を見た。
電車はまだある、が、
自分よりでかい男を担いで何十分も移動することは、きっと過酷だ。
何よりこんな姿の上司を、誰にも見せる訳にはいかない。
あぁ俺って、良い奴だなぁ
しみじみと天を仰ぎながら思う。
ここで言う良い奴というのは、「お人好しは馬鹿を見る」って意味だ。
「…ジュリアさん、」
「はぁい?」
「ほんなら俺、リーダー連れて帰りますわ。タクシー呼んでもらえます?」
出されたビールを横から頂戴する。
手間賃だ。これで勘弁しといて差し上げよう。
彼女は目をまん丸くさせて、一拍置いてから「わかった。」と言った。
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