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「俺な、実はお前がゲイやって聞いてから、ちょっと調べてみた。」
「…え…何を…」
「…どうやって、セックスすんのかなって。」
「えっ」
ベッドに並んで腰を掛けて、男2人が見つめ合う。
この状況で尚も塚口さんは穏やかに、
だが恐ろしいことを口走った。
「何で、そんな」
「単純に気になってなぁ。いやー流石にマッチョのんは見るに耐えたけど」
「ってまさか何かビデオとか観たんすか!?」
「おー観た観た。すっごいなぁーあれなぁー。パンチあったわー」
何度だって俺は確信する。
この人は何処かの回路が故障している。
俺がゲイだと聞いて、何であんたがゲイビデオ漁ってんねん。
でも、今の言い方からすると、
やっぱり理解はできないんだろう。
そら俺かてガチムチはちょっと怖いと思うけども。
次に何を言い出すのだろう。
ハラハラしている内に、塚口さんの掌が俺の頭を撫でまわす。
ちょっと強めやから、俺の首ごとぐわんぐわんと揺れた。
「…でもなぁ、さっき自分で、お前のこと好きやぁって言うて、…それでやっと、あぁお前のこと好きやったんやなぁと思うと、全部繋がってまうもんなぁ…」
塚口さんは、仕事の時には見せない、ちょっと眠たそうな半開きの目で、柔らかく微笑む。
そして何だか楽しそうに俺の頭を揺さぶり続ける。
視界が安定しないので気持ち悪くなりそうだけど、
あんたが楽しそうなのでどうも制止できない。
2回目だ。
塚口さんが俺のことを、好きだと言った。
「お前と一緒に居りたくて、…しょーもない話しかしてへんのになぁ。お前が居らんと、探してみたり、お前が合コン行くって聞いたら、なんや複雑なってなぁ…うん。一緒や。」
「…一緒…なんすか…」
「うん。…あー、俺ら、あかんなぁ。」
やっと手が離れる。
まだぐらつくが自分の掌で額を支えて、正面を向いた。
「俺ら、どっちも、人を好きになるん下手くそやなぁ。」
顔を見れたのは一瞬だった。
いや正確に言えばまだ塚口さんは視界には存在するのだが、
急に狭まった距離のおかげでピントが合わない。
身を乗り出した塚口さんの腕は俺の背中にまわされる。
ただ呆然とする俺は動けない。
でもあんたの笑顔は見えた。
今は口角が上がったままのその唇が、
俺のそれと、重なっている気がする。
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