第九話

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あまりにも脈打つ振動に、感動にも似た気持がこみ上げる。 指先に力を込めて、胸板に沿わせた。 「自覚するのとせぇへんのとで、こんなにちゃうもんなんやな」 俺の手が自主的に塚口さんに触れているのを感じたのか、 塚口さんの手は俺の手首から離れていく。 「…塚口さん。」 「ん?」 「する、んですか?」 「んん、だって、お前、まだ疑ってるやろ?」 「うっ…はい。でも、その、ヤるんやったら、色々準備が」 「あぁ、せやなぁ…」 どうやら自己学習を済ませていたらしい塚口さんは、話の飲み込みも早い。 男同士だと、セックス1つするにしても気軽にはできん。 勿論俺は随分と前に知識は習得済みだ。 だが、実践の機会も無かったので、そこで止まっている。 この体勢だと、お互いの役割分担は自動的に済んでいるようだ。 つまりは、俺がその準備をしなければいけない側で… 改めて考えて、体が硬直する。 此処まで来て、何もしないってのも、惜しい気がする。 「せやから、最後までせんでもええんちゃう?お前も初めてなんやろ?」 「はい…え?」 「ちょっとずつしたらええやん。…ええよな?」 「…はい…」 塚口さんの笑顔に釣られる。 ちゅっと軽いキスの後、手が服の下に潜り込んで来た。 何処だってそうだが、他人に触れられたことなんて無い。 くすぐったさにたじろいで、必死に目を瞑った。 たった一言なのに、舞い上がりそうだ。 ちょっとずつ、したらいいなんて、 ちょっとずつ俺達の未来が、続いていくみたいで、 期待してまうやろ。 「…まぁとは言いながら、俺も男相手は初めてやしなぁ、」 「そりゃ、そうでしょうね…」 「下手くそやったらほんま悪いけど、触るで。」 「え?う、おぉあ!!」 わき腹に添えられた手と逆の手が、 布の上からだが、俺の下腹部へと進む。 驚いて大声を出したら「うるさい!」と腹の皮をつままれた。 初めてのキス、からの、色んな個所へのキスを受けただけなのに、 もう俺は完全に勃ち上がってる。 そんなもん見なくても判る。 恥ずかしくて死にそうで、両手で顔を隠すが、 「お前そんなんで最後までできるんいつになんねんな」 と、ごもっともな突っ込みを受ける。 ズボンの膨らみにそって這わされる指が、 ベルトのバックルに移っていった。
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