第九話

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「お前も、ほら」 声が催促するのは、 俺にも塚口さんに触れろということだ。 どんどんベルトは外されて、ズボンのチャックに指がかかる。 慌てて俺も、勢い任せに相手のベルトに手をかけた。 逆向きやと、難しい。 しかも良く見えないので手探りだ。 そうこうしているうちに、俺の方は前を寛げて、 下着一枚を隔てて、また分厚い掌の感触に襲われる。 「…当たり前やけど、自分以外のん触るの、変な感じ。」 「俺も、っす」 「がちがちやん。」 「うわもう、…いちいち言わんでください…」 やっとバックルが外れた。 ボタンも外して、徐々に露わになる塚口さんの分身。 俺のこと散々いじってきてるくせに、 ちょっと硬くなっている。 顔を上げて塚口さんを見た。 勃ってるのが俺にも知れて、どんな表情するのかが見たかった。 あんたは含み笑いのまま、先程より強めに俺自身を扱いた。 衝撃に背中が浮いた。 「んっ、つか、ぐち、さん」 「…なんやい」 「…塚口さんも、そこそこ、勃ってますよ」 「言わんでええ。」 がぶりと、噛みつくようにキス。 それと同時に、手が、下着の中に差し込まれる。 もうこれは意地の張り合いにも似ていて、負けじと俺も相手の下着に指を突っ込んだ。 一瞬でもひるめば、意識ごと持っていかれる。 不格好でもいい。 獣みたいに、馬鹿みたいに欲しがる。 これで良かったのかもしれないのだ。 俺が今まで、相手がどう出るかも判らなかったからって、 臆病になりすぎてたのか。 あんたが欲しい。 あんたが好きや。 もっと正直に、真正面から言っていたら、 もっと早くこうなれてたのかな。 舌を絡める水音が聞こえるが、 手元からも時折、濡れた音がする。 どちらのかは判らん。 塚口さんの方も、初めより熱くいきり立つ。 お互いの掌が、腹の間でぶつかり合う。 冬やのに、熱い。 全身からじっとりと汗が噴き出している。 空いている方の手を塚口さんの顔に添えたら、 頬は熱く、汗ばんでいた。 部屋が暑い訳でもない。 興奮、してくれてんのかな。 「…暑い、ですか?」 「…暑い、な。脱ご。お前も脱げば?」 「え、や、俺はだって」 「おっぱい無いの知ってるから。」 躊躇していた理由をずばり言い当てられ、 一旦休戦し、2人とも無言でカットソーを脱いだ。
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