第九話

11/11
前へ
/115ページ
次へ
「あっ…う、っ」 勝手にびくつく身体は止められない。 何度かに分けて、精液が飛び出るのに合わせて震えた。 俺が射精してるのに気づいて塚口さんは手を止めたが、 最後まで絞り出すように、ゆっくりとまた動きだす。 だからまた快感が背筋を突き抜ける。 「…塚、口、さん…」 「俺のも…」 「えぇ…?」 「俺もイキそうやから、手伝って。」 力の抜けた俺の手の上から、自分の手を重ねる。 朦朧としながら、意識をやっとこさ、手元へ送った。 先端からはぷくぷくと先走りが溢れてる。 指で掬ってすべりが良くなるようにと絡めつける。 相手のん、触ってるだけなのに、 また俺も興奮している。 けだるさよりも、あんたを気持ちよくさせたい。 一層強く、荒く手を上下に動かしてやると、 唸りながら俺を抱き締める。 この距離に居たことはあったんよ。 すぐ傍にあんたの体温を感じてたのに、 1ミリも触れられへんかった。 最早走馬灯かもしれない。 酔いつぶれたあんたを担いで帰った。 2人向かいあって、家で飲むようになった。 職場の喫煙所で、一緒に過ごすようになった。 酔ったあんたが抱きついてきたこともあった。 抱き締められるんて、息苦しいんやなって、俺は知った。 だけどもっと、もっと強く抱いてくれていいのに。 それはこれから、かなぁ。 抱き締めるあんたの手は、突然べしべしと俺の背中を叩いた。 「なんすか?」 「…イく、イきそ。」 宣言通り、直後に塚口さんも果てた。 吐きだしたものが更に俺の腹にばらまかれて、目も当てられない。 胸を上下させて、やっと緊張が解けたようにベッドに沈み込んだ。 塚口さんは手で顔を覆っているが、 火照った頬が横から覗いている。 「…おい、」 「は、はい」 ガン見してたのがバレたのかと思い、声が上ずった。 「…次は…最後まで、すんぞ。」 「はい、……え?」 「なんやねん?」 やっと、思考が明瞭になってきたのだ。 何気なく言ったであろう、「次」って言葉が、 どれ程心を震わせるか。 次があるんやね 俺とあんたは、まだ先も一緒に居れるんやね べっとべとの腹のまんま、ベッドに大の字に並んだまま、 はらりはらりと、とうとう俺はほんまの涙を流してしまった。 気づいてるんか判らんけど、 黙ったまま頭を抱きよせて、ぽんぽんと叩いてくれた。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1150人が本棚に入れています
本棚に追加