VI

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何と無くそんな気はしていたんだけど、俺の予想通りその日朔夜が帰って来る事は無かった 気になって何度か電話を掛けようとしたけど何を話せばいいか分からず結局出来なかったんだ 俺の態度が朔夜をそうさせてしまったんだから仕方ない…… だけど、夜中会社に泊まるって言う短い文章の連絡だけ送られて来た それでも昼頃になっても帰って来ない朔夜…… いつもはスーツを着て出勤するけど出て行った時の服装は私服のまま 社長だから別に何でもいいんだろうけど 『……よし、行くか』 準備を済ませ俺は車のキーを手に取った それから朔夜の会社に到着した 来たのはいいのだが…… 連絡したら直ぐに出て来てくれるんだろうけど何しに来たって言われるのも何か嫌だしやっぱり掛けずらいし…… あ、尾澤さんに連絡……いや、それは何か違う ってか普通に考えて今の時間って普通に仕事中なのでは?と気付く何も考えてなかったアホな俺 どうしようかと会社の前でウロウロしていると、俺に近付いてくる人物に気が付いた 「あの……?」 『え?』 声の主を見てみると、何とその人物は朔夜のセフレ…… いや、元セフレ 「ああやっぱり!前に朔夜と一緒に居た人ですよね?」 俺の顔を見てニッコリと笑った 『あ、ああ……あ、はい。そ、そうですけど……』 突然の遭遇に挙動不審になってしまった ま、マジかよ まさかこんな所で…… いや、ここは朔夜の会社の真ん前 一体何しに来たんだ 改めて女を見てみると、やっぱり凄く綺麗な人で…… 「もしかして、貴方も朔夜の会社に勤めてるんですか?」 『え?いやっ!違います!』 慌てて否定すると、何か考えるような素振りを見せた 「……今って時間ありますか?良かったら少しお話ししませんか?」 『え?』 な、何故こんな事に…… 導かれるがまま近くにあった喫茶店の奥のテーブル席で朔夜の元セフレと向き合って座っている 時間的にも店の中はガラガラだった 「珈琲は?それとも紅茶ですか?」 『いや、俺は何も……水でいいです』 本当は喉がカラカラ過ぎてピッチャーで水が欲しいくらいだ 話すって……一体何を話せばいいんだ 俺が1人で挙動不審になっていると、女の方が先に口を開いた 「貴方と朔夜の関係は知ってます」 『え?』 「以前朔夜の会社の人に尋ねたら朔夜は同性の人と付き合ってるだとか……憂って貴方ですよね?あの時確かに朔夜は貴方の事を憂って呼んでいましたから……」 『…………そうですけど何か?』 隠す理由は無い 一瞬動揺したが俺は直ぐに答えた 「お願いです。朔夜と別れて下さい」 女は真っ直ぐに俺の目を見てそう言って来た .
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