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だけど俺は絶対に抱き締め返したりはしない……
ただじっと立ち、ユキさんが離れるのを待った
「…………憂君は本当にいい子だね」
俺の頭を撫でた後、ユキさんはゆっくりと離れた
「彼氏さんの事本当に大切にしてるんだな。今日だって本当は彼氏さんの為に来てくれたんだもんな」
『それだけじゃないです。お礼も兼ねてだったから……』
「うん、分かってる。分かってるけど……これ以上憂君と一緒にいると俺本当にやばいかも」
そう言った後また俺をぎゅっと……
流石に何度もこんな事されちゃマズイ
また押し返そうとした時、ユキさんは言った
「もう彼氏さんに連絡してもいいよ」
『え?』
「本当は夜まで一緒に居たかったけどこのままだと俺絶対に手ぇ出しそうだから。や、既に出しちゃってんだけど……たった数時間だけだったけど楽しかった」
『…………』
それから、連絡をし居場所を言うと直ぐに来てくれた朔夜
何故か朔夜は汗だくで……
『……大丈夫か?』
「はぁっはぁっ……大丈夫じゃないよ!ずっと走り回ってたんだから!こいつの車見つけたけど店が多過ぎて何処に居るのか全然分からないしカラオケにも行って一部屋一部屋全部調べたし……まさかこんな所に居たなんて。クソッ」
息を切らしたままユキさんを睨み付ける朔夜
「お前まさか憂に変な事してないだろうな」
「さぁ?」
「いやクソマジでぶっ殺す」
『やめろって!!』
また殴りそうな朔夜を俺は必死で止めた
「俺とした事が憂からの連絡にも気付かず本当に大失態だよ!連絡くれた時は一体何処に連れて行かれてたの!?」
『えと……洋食屋?』
「洋食!?そんな店あった!?……分かった、あのビルか。クソッそっちだったか……」
「え、憂君彼氏さんに連絡してたの?いつの間に?……ああ、席を立った時か」
『ご、ごめんなさいっ!でも居場所は言ってませんよ!?』
「言えば良かったのに」
『へ?』
「だって言ってたら憂君にキス出来たじゃん?」
その瞬間朔夜が叫んだ
「はぁッッ!?」
『ユキさん!!』
何言ってくれてんだこの人!
「お前……」
『大丈夫!何もされてねぇ!マジで!!』
俺は再び朔夜を押さえた
「……憂じゃない匂いがする」
『え?』
「何をした!?」
一瞬で手を伸ばしユキさんの胸倉を掴んだ朔夜
『朔夜!』
「ただのハグですよ。気にしないで下さい」
「貴様ッッ!!何が何もされてないだこの野郎!!」
『わーーーーッッ!!』
「じゃあね憂君。今日は本当に楽しかった、有難う」
『こちらこそ……有難う御座いました』
「さっさと消えろゲス野郎」
朔夜を宥めるのに本当に苦労した
良かった人通りの少ない場所で……
『俺、ユキさんの事応援してます。ユキさんみたいな人がこんな俺みたいなの相手にしてくれて……本当に有難う御座いました』
「有難う。また何処かで会えたらいいね」
「次また偶然だってふざけた事言ったらお前の事務所乗り込んでストーカー野郎って怒鳴り付けるからな。次は本当に何があっても許さないから」
「はは……怖いな。憂君にGPSも付けてるし、貴方って本当に凄い束縛彼氏ですね」
「は?」
『し、心配性なだけだよな!?なっ!?』
ちょいちょい毒を吐くユキさんに俺は冷や汗が出まくりだ
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