VI

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予想した通り女はまた会社に来た 本当にいい加減にして欲しい……このままだと尾澤だけじゃなく他の社員にも迷惑が掛かる それにいつ憂の耳に入るか分からない 尾澤からまた連絡を受け直ぐに会社に出向いた 今日憂は仕事で居ない その間にさっさと片付けるか 「私の話をやっと聞いてくれる気になったのね。嬉しい」 「超迷惑なんだよ本当……で、何が言いたいの?」 会社から離れた場所にある古い喫茶店に入りそこで話を聞く事に ここなら人も少ないし余計な話を聞かれずに済むだろう 「前に言ったわよね、貴方の子を生んだって」 「くだらない嘘は吐かない方が身の為だよ」 「……ほら、可愛いでしょ?愛莉って名前なの」 目の前に写真を出された そこにはピンク色の服を着た小さな女の子が…… 「本当は連れて来たかったんだけど今日は保育園でお友達のお誕生日会があるからってどうしても行きたがって……」 「…………」 「単刀直入に言うわ。貴方は父親……だから、私達の所へ来て欲しいの。今直ぐにとは言わないわ、まずはあの子と会って欲しい」 「嫌」 直ぐにそう返事をすると、女は深い溜息を吐いた 「そう言うと思っていたわ。急な話で貴方も驚いたわよね……でもまだ独身なんでしょ?付き合ってる人がいるかどうかは知らないけど…… お願い、あの子の為にも……。父親の顔を知らないあの子は父の日の似顔絵も書く事が出来ないのよ?その度にお友達からお父さんは?って聞かれるあの子が本当に可哀想で……っ」 「作り話が随分と上手いんだな」 「作り話じゃない」 「俺が父親だと言う証拠は?」 「貴方しかいないわ」 「バカバカしい」 そう言って万札をテーブルに置いた後席を立った 「待って朔夜!話はまだ終わってない!」 「……ああ、そうだ。次会社来たら業務妨害と不法侵入で警察呼ぶね」 「直ぐに返事をしなくてもいいから!お願い、帰るならせめて連絡先を教えて」 「無理。ずっと鳴らされたら俺の気が狂う」 「逃げないで朔夜!」 女に手を掴まれたが直ぐに振り払い喫茶店を出た 疲れた…… 本当に疲れた 証拠も無いくせに何が父親だ 苛々する………… 『何か疲れてる?』 「え?」 夕食後、テレビを見ながら憂とまったりしていると突然そう聞かれた 「何で?」 『何となく……ボーっとしてるし』 「そう?ああ、もしかしたら欲求不満なのかも」 『はぁ?』 「ねぇ……今日…………いたっ!」 太ももを撫でると手を叩かれた 『何が欲求不満だ!!お前の性欲マジでバグりまくってんだろ!』 「昨日は昨日、今日は今日だよ」 『あほか!!んんんッッ!!!』 怒る憂を無視し無理矢理口を塞いだ 「今日は甘えたい気分。ね?ちょっとだけでいいから」 『お前のちょっとはちょっとじゃねえ!』 「明日憂の大好きなA5ランクの和牛ヒレステーキ買ってくるから」 『……いやっ!ダメだ!ぜってー触んな!!』 「ふふっ」 一瞬本気で考えた憂が可愛くて堪らない 憂は俺の癒し .
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