VI

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「先帰ってて」 『え?』 急に袋を渡された 『何……?』 朔夜を見てみると、顔が…… 「貴方の家がこの辺りにあるって聞いて……良かった、こんなに早く会えるなんて思わなかった」 朔夜に話し掛ける凄く綺麗な女の人…… 思わず俺はその人をじっと見つめてしまった 『誰?会社の人?』 「後で説明するから今は先に帰ってて」 『……分かった』 俺は朔夜のこの顔を知っている 今は深く聞かない方がいいと思った これは本当に直感…… 朔夜の様子を気にしつつ足を動かした時、女が言った 「勝手に産んでおいて今更あんな事言われたって困るだけよね、ごめんなさい」 「……ッ」 勢い良く俺を見た朔夜とバチッと目が合った 産んで……? え、この人一体何の話をしてんだ? 「憂、違う……!お前ッッ」 『ち、ちょっ!』 女に掴み掛かろうとした朔夜を慌てて止めた 『どうしたんだよ急に!落ち着け!』 「…………っ」 『朔夜!』 相手は女なのにこの怒り様…… この人、朔夜に一体何をしたんだ 俺の知らない所で何かあったのか……? そんな素振り、今まで無かった 「……ごめん。大丈夫」 そう言って俺の手をそっと離した朔夜 『本当に大丈夫か?』 「うん」 けどさっきより表情が…… 『すいません、これから用があるんで俺達もう行きます』 俺は女にそう言い朔夜の腕を引いた 深く聞かない方がいいと思ったけどこのまま朔夜を置いて帰る訳にはいかなかった 「待って!せめて養育費の話だけでも……!」 『養育費……?』 「信じるな」 『ちょっと待てよ、養育費って一体何の話だよ』 手を離しじっと朔夜を見つめた 「全部この女の作り話だ」 「作り話なんかじゃないわ……お願い朔夜、私達の所へ来てくれないならせめて養育費だけでも出して欲しいの。貴方社長なんでしょ?」 養育費………… 『朔夜、お前……』 「俺じゃない」 「貴方の子よ!」 「はぁ……」 深く溜息を吐いた後、朔夜は財布を出し入っていたお札を全部女に差し出した 「クソッ目的が金なら最初からそう言え。明日まとまった金を渡してやるから会社に来い」 「分かったわ」 「行こう」 『……っ』 俺は朔夜の手を振り払った 『や……マジで訳分かんねーよ…………』 「違う!俺の話を聞いて!」 一瞬で頭の中がごちゃごちゃになった 「憂!」 『触んな!!』 どうすればいいか分からなくなった俺は朔夜を突き飛ばし直ぐにその場から逃げた 子供…… .
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