VI

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「……で?頭の調子はどーだ?」 『だからその聞き方……』 長谷川さんに連れてって貰った場所は尾澤さんの居酒屋じゃなく別の所だった 珍しい、てっきり尾澤さんとこに行くかと思ってたのに 「さっ君も来るんだろ?場所ちゃんと言ったか?」 『あ、いえ……ちょっとだけ飲んで帰るとは連絡したけど店の場所までは……ってか尾澤さんとこかと思ってたんで』 「だよなー?後で俺さっ君に怒られそうだな。今から店の場所言っときな?」 『あー……まぁ尾澤さんとこじゃないって分かったらGPSで勝手に調べてここに来ますよ』 「そうだった。チビ太にGPS付いてんのすっかり忘れてたわ俺」 『はは……』 数え切れるくらいしか来た事ない居酒屋だった そう言えばここは朔夜と来た事無いかも 昔に来た時よりも何となく店の中雰囲気が変わっていて新鮮な感じがした 「大分前にここの店長が代わってさ、今は俺のツレが店長やっててたまに顔出してんだよ」 『あ、成る程……』 だから尾澤さんとこじゃなくてここと言う訳か 今の所そこまで客は入っておらずガヤガヤとしてなくて…… 尾澤さんの居酒屋は今凄く忙しくていつも客がいっぱいだからゆっくり飲むにはここで丁度良かったかも知れない 取り敢えず乾杯を済ませ、ジョッキに入ったビールをグイッと一口飲んだ 「……で?今日1日浮かない顔してんのは何でだ?」 『え?』 急にそんな事を聞かれた 「分かり易過ぎてめちゃくちゃ気になっちまったわ。どーせさっ君絡みだろ?」 『俺そんな分かり易い……や、分かり易いか。そーですよね、俺ってマジで分かり易い奴ですよ』 「遂に認めたな〜?そーそー、チビ太はそうやって素直になった方がいいんだよ。いっつもムキになるからな」 『別にムキになんか……』 「で?今度はさっ君何やらかしたんだ?それともチビ太郎がやらかした系?」 『…………』 このモヤモヤを長谷川さんに相談しようかかなり悩んだ けど、まだ朔夜の子供だって事は確定はしていない それに朔夜は絶対に違うと言い切っているし…… 『あー……別に大した事じゃないんですけど』 「うんうん」 何か言わないとずっと聞かれそうだと思った それに折角心配してくれてんだし…… だから、俺は子供の話は伏せあの話だけをする事に 「さっ君の元カノ?」 『や、付き合ってた訳じゃないらしいんですけど俺と出会う前に色々と……』 「成る程ね、そりゃモヤるな」 『はは……』 俺の心境を何となく理解してくれた長谷川さんはうんうんと頷いた 「過去の事はどーにも出来ねーからなぁ、それはチビ太が自分で上手く消化するしかねーわな」 『そうですよね』 「さっ君格好いいからな〜……そればっかは仕方ねーな」 『はい……』 「まぁ遠慮せず飲めよ」 『あ、有難う御座います』 そして空く度に運ばれて来るジョッキ達…… 「さっ君おせぇーよ」 「憂は?」 「奥の座敷で潰れてる」 「奥?」 「店長に感謝しろよ〜?今日は客が少ないから寝かせてもいいって言ってくれてさ。俺が送り届けても良かったんだけど……すげーなGPS」 「結構飲んだ?」 「いやそんなに……」 「分かった、有難う」 「ちょっと待った!まぁ座れって〜」 憂の所へ行こうとしたら長谷川君に止められた .
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