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この地区に入って、今日でもう三日目になる。
高いビルの多い元市街地だ。
オレが乗っているAMSはキャラバンタイプなので、突然狙撃されたとしても、装甲が抜かれる心配はあまりないが、それでもやはり神経は絶えず緊張していて休まらない。
しかし、それぐらいでいいのだ、とも思う。
視界が良い場所で、射程距離に入る前に目視でグールを見つけたとしても、昨日のように油断をしていれば命に係わるのだから。
「大丈夫か?」
オレはコンソールマイクに向けてそう声を掛ける。
相手は並走するサポートロイドのルーだ。
一見すると容姿の端麗な――端麗すぎるとの評価が一般的なのだが――ごく普通の少女。
服装も、物々しい弾帯やガンホルダーベストさえ外せば、真っ白い長袖のワンピースという普通の女性の出で立ちだ。
人間と変わらない外見をしているのは、本来、このアンドロイドがサポートするのは戦闘などではなく生活全般だからだ。
グールが現れ、この世界から普通の生活などというものが失われてから、このサポートロイドの主な仕事はグール退治のサポートに成り代わったんだ。
まあ、オレのように嫁さんもいない身では、夜のお相手を勤めてもらうこともなくはないのだが。
先の質問の意味は、彼女のエネルギー残量についてだ。
オレのAMSはもともと自衛隊の補給部隊でつかわれていた物で、充電池容量もかなり大きい。
従ってオレだけならば長期の活動も可能なのだが、ルーの場合はそうはいかない。
戦闘時以外ではそれほどエネルギー消費も大きくはないが、それでも最後の充電が三日前とあっては激しい戦闘がおきた場合、少々不安がある。
「非戦闘状態限定ならまだ三日はいけるわ。戦闘なら一時間ってとこかしら」
一時間も続く戦闘などまずないが、ここからドラゴンベルトのところまでは順調にいっても24時間はかかる。
やはり一度、AMSから電気を別けておいてやるべきか。
「わかった、視界の良い所をみつけたら休憩にしよう。こっちの電気を少し別けとく」
「了解」
制圧戦と言えば、聞こえはいいが、実際のところビクついているのはオレたち人間の方だ。
グールに自我はない、とされているが、数体の連携による囲い込みなどをやる程度の知性はある。
警戒を解いたところで襲われでもすれば一巻の終わりだ。
オレは建物の少なくなっていきそうな方角へと進路を取る。
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