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昨日知り合ったAMS乗りたちとは、ヤゴを一緒に喰った後、別れていた。 地下掃討戦まで一緒に組んで動けばいいようなものだが、あいつらのルーを見る目、語る口が、オレをどうにも落ち着かない気持ちにさせた。 合成酒の安い酔いのせいなのかもしれないが、やれ「貸してくれ」だの「どんなことを仕込んでいるのか」だのの話題が、冗談ばかりでもないように感じられたんだ。 挙句に奴らの内の一人がルーを「ダッチワイフ」と呼んだ時、オレは無言で荷物をまとめ始めていた。 手こそ出なかったが、それは自制が効いたというよりも「地下掃討戦の戦力を少しでも減らすべきではない」という漠然とした強迫観念のような思いのせいだった。 こう言うと、何かオレがものすごくケンカに自信がありそうに思われるかも知れないが、そうじゃない。 万が一ケンカになったとしてもこちらにはアンドロイドのルーがいるからだ。 彼女に素手で勝てる人間なんてこの世には存在しない。 奴らは一瞬あっけにとられた顔をしていたが、すぐにリーダー(蒼いAMSのヤツだ)が代表するかのように謝り、オレたちを引き止めた。 リーダーはその風貌も愛機と共通するところがあって、狼のように精悍な眼差しをしていたが、とても理知的に話をする男だった。 理知的に言葉を尽くして非礼を詫び、一緒にいることのメリットを説いた。 ルーをダッチワイフ呼ばわりした髭面の男も頭を下げて謝罪してくれた。 しかし、けっきょくオレは奴らの言葉には一言も返さないままに、AMSに乗り込んで野営地を去った。 グールをおびき寄せることになってはマズイので、できるだけ音を出さないように低速でAMSを走らせたのだが、奴らは追いかけてはこなかった。 オレ自身のしていることを考えると、奴らの言葉のどこにも間違いは見つけられなかったのだが、腹の中でぐるぐると廻る不快感は、夜が明けた今もまだ小さく燻っている。
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