伊瀬先輩が入院していた話

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・:*:・゜'★,。・:*:・゜'☆・: まずバスで下まで降りて、電車を乗り継いで地下鉄に乗ってこの駅で降りて…と、寝る前に病院への道筋を何度も確認した手間は、学園に降りてきたヘリのせいで完全に徒労となった。 「…いいんですけどね、楽ですから…」 「ふふふ、木崎くんとお空のデートと言うのも楽しいね」 「…はあ」 「ほら、もうすぐ伊瀬くんの待つ病院だよ」 ヘリに乗せられ、隣に座る理事長代理の楽しそうな声に顔を上げて窓の外を見ると、言われた通り大きな病院が見えてきた。 「大丈夫。そんなに心配しなくとも伊瀬くんは元気だよ」 何も言わずともお見通しだとでも言うように、にっこりと笑いながら長い指で額にかかる前髪を払われる。 そのまま、軽く数度髪をとかすように頭を撫でた後頬を撫で手は離れていく。 「少しクマが出来ているね。そんな不安そうな顔をしていては、伊瀬くんの方が気をやんでしまうよ?」 そんな表情も可愛いのだけれどね。と悪戯めいたウインクを飛ばす理事長代理の表情に、少しだけ強張っていた表情が和らいだ。
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