海と嫉妬と絶体絶命

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『ふふ…抵抗しても無駄ですよ』 『っは、離せ!』 ベッドに横たわった自分の腹部に跨がり、口元に浮かんだ艶やかな笑みに一瞬見惚れてしまいそうになるが、自分の置かれた状況を思い出して慌てて脚をばたつかせた。 両手をベッドに縛られ自由を奪われたまま、頬を撫でる白く細い指にぞくぞくと背中が震えた。 『可愛いですよ、伊…「眞城ーーーー!!」 「うっひょおう!!」 途中でなんだか楽しくノリノリになってきた伊瀬先輩受けの妄想は、突然の背中への衝撃に中断されてしまった。 「っな、なに!?氷呂!?」 声はするけど姿は見えず。背後から聞こえたのは部屋にいる筈の、聞き慣れた親友の声だった。 「…眞城ー…」 背中に貼り付いた氷呂の頭を体を曲げてぽんぽんと叩くと、背中から腹に回された腕がぎゅうっと力を込められた。 「なに、どうした?伊瀬先輩に喰われた?」 何があったかはなんとなくわかるが、確認するように腹に回された手をぽんぽんと叩くと身体がビクッと震えた。 「く…喰われ、てません」 …かーわいー! 「そっかー喰われてはないのかー …何をされたの?」 「……まだそんなにされてません」 背中にぐりぐりと頭を押し付けられて、微妙に気になるフレーズはさておき。少々様子がおかしい氷呂を背中に貼り付けたまま、エントランスまで移動して端の方のソファーに座らせた。 「さて。お話を聞きましょうかね?」
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