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目を逸らしても感じる、視線と言う名の暴力のせいで花火に集中出来ず、逃がさないように捕まえた眞城ののシャツを握り締める手に力を込めると、軽く眞城に肩を叩かれた。
「なんですか眞城」
「伊瀬先輩」
「私は行きませんよ…!」
「そうじゃなくて、さ。ほら」
「…?」
促され、振り返ったそこには数人の女性に囲まれた伊瀬の姿があった。
「この辺が貸し切りだって知らない一般客が迷い込んだのかもな
ほら、注意してこなきゃ副会長」
「風紀は…」
「なに?副会長様は職務放棄?」
「う…うー…眞城、嫌いです」
「俺は大好きだよ。ほれ行ってこい」
「うー…」
軽く背中を押され、諦めてこちらに背を向ける伊瀬の元へとのろのろと歩き出す背中に、眞城の満面の笑顔を感じるのは気のせいではないはずだ。
ずりずりとビーチサンダルを引きずり、前に進むごとに段々ムカムカと腹が立ちはじめる。
人にはあれこれと文句をつけるくせに、自分だっていつもいつも目につく場所でこんな事になっているではないか。
見えない場所にいればいいのに。
むかつく。
「伊瀬、何をしているんですか」
「あ?」
ゆっくりと息を吐いて、いつもの顔を作り口を開くと少しだけ調子が戻ってきた。
「そちらの方も…申し訳ありませんがこの近辺は貸し切られていて関係者以外は立ち入り禁止となっています」
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