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「そうなんだーごめんね?人が沢山居たからつられてこっちに来ちゃった」
伊瀬の隣に立つ女性は、ショートカットでマイクロミニのパンツ姿の活動的な女性と、ふわふわとした柔らかそうな長い髪に、白いワンピースの似合う人形のような女性の二人連れだ。
「じゃあホテルの方に戻ろっか。キミたちも一緒に行かない?」
ワンピースの女性が笑って謝罪すると、もう片方のショートカットの女性が笑顔を浮かべて伊瀬の腕を取り、それを見ていると、胃の辺りがむかむかと痛んだ。
「申し訳ありませんが、規則ですから」
声を固くしながら、伊瀬に触れるその手を無意識に睨み付けていた事に気付き目を逸らす。
「伊瀬が何処で誰と何をしようとどうでもいいんです。ただ、立場上注意しなければならない私の目に入る場所でするなと言っているんです」
何故、こんな事を自分が気にしなければいけないんだ。
「ああ悪かったな。目に入らない場所でやるから…」
「伊瀬」
こちらに背を向けて腕を取る女性と移動しようとする伊瀬のシャツを、反射的に捕まえていた。
「目に入る場所でするなと、言っています」
自分でも何を口走っているのか、驚いたような表情からじわじわと緩んでいく伊瀬の口元が腹立たしい。
「そうかそうか。よく解った」
「なにが」
「ちゃんと見張りやすい場所に居てやるよ」
「っ誰もそんな事…」
「悪いな。うちの女王様がご機嫌ななめみたいなんで一緒に行くのはやめとく」
シャツを掴んだ手を握られ、反対側の手をひらひらとさせる伊瀬の足を踏みつけるが緩んだ口元は戻る様子がない。
「そっかぁ残念、二人とも仲良くねー」
解っているのかいないのか、楽しそうに笑い声を残しホテルへと戻る二人の背中が消えた頃、握られた手に力が入った。
「お前、時々本気でかわいいな」
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