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「っちょ、伊瀬、ど…何処に連れていくつもりですか?」
伊瀬に掴まれたままの手を引かれ、人気のない場所へと連れていかれそうになり慌ててその場に踏み留まるが、砂地では全く抵抗出来ずにそのままずりずりと引き摺られていく。
「いいから付いてこいって、理事長が穴場を教えてくれた」
「…理事長、が、ですか?」
あれだけ毛嫌いをしていたくせに、都合のいい所だけ言うことを聞くのは如何なものか。
「人が行かない場所だが花火は良く見えるらしい」
「…生徒会として皆の近くに居なければならないのですが」
「そう言うな。行けば絶対気に入ると言われたんだよ」
周りを見ても人気どころか花火の音しか聞こえないような場所を手を引いて歩かされ、元々高かった不信感が最高潮に達する寸前。
「ここだ」
「う…わあ」
急に道が開け、大きな音と共に目の前の空いっぱいに大輪の花火が咲いた。
「な?」
「…はい、凄いです」
空を見上げながら素直に頷くと、わしゃわしゃと頭を撫でた伊瀬がそのまま地面に腰を下ろした。
「ん」
「…何でしょう」
「色々とお疲れの副会長様を労ってやろうって言ってんだよ」
地面に胡座をかいて、両手を伸ばして、上に座れとでも言うのか。
「遠慮しておきます」
「遠慮すんな」
「私はここ…、っぅわあっ!!」
「はいいらっしゃい」
距離を取ろうとした瞬間、思いっきり腕を引かれ、バランスを崩した体は伊瀬の膝の上へと倒れ込んだ。
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