旅行は家に帰るまでが旅行です

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「木崎」 「…ぅ」 「木崎…?」 「んー…」 名前を呼ぶ声にぼんやりと返事を返していると、不意に身体が浮き上がり足が地面から離れた。 「いせー…?」 「帰るぞ」 「うー…まだ、ゃ…」 「嫌もなにも半分寝てるじゃねえか。花火が見たいなら部屋からでも見える」 「なら……もど…」 急激に襲ってきた眠気のせいで動かない体を抱き上げられて、頬や瞼に柔らかい感触を感じながらそのまま自分から意識を飛ばしていく。 「木崎」 「ん…」 「連れて帰っていいか?」 「…は、い…」 ホテルへと戻る途中。なにかいろいろと話しかけられたような気がしたが、曖昧に返事を返していた記憶がうっすらと残っているだけだった。 「…ん?」 気が付けば花火はとっくに終わっていて時刻は深夜。 ベッドは2つあるはずなのに、何故か同じベッドで自分を抱き枕にして眠る伊瀬の寝顔を唯一自由に動く首を動かして確認し、起こして退かせるのも面倒になり、結局そのまま旅行最後の夜はそのまま再び眠りにつくことになった。
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