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※side 眞城※
バスと電車と地下鉄を乗り継いで、降り立った駅で鞄から取り出した電話を掛ける。
数回のコールの後、テンション高く繋がった聞き慣れた声に安堵と懐かしさを感じながら、軽く手を挙げてタクシーを止める。
「ジュエリー眞城までお願いします」
にこやかに告げた、高校生には似合わない目的地に一瞬だけ不思議そうな表情を浮かべた運転手はすぐに仕事モードに変わり、ゆっくりとタクシーは出発した。
最近はお求め易い価格とデザインで若者にも人気の宝石店として名前が売れているジュエリー眞城だが、それは支店に限った話で実は本店は創業80年を越える老舗で、未だに本店は一見様お断りのゾーンが存在している。
老舗の重厚さを残したまま、三年前に改修したばかりの本店の前に止まったタクシーから降り立つと、そこには人だかりが出来ていた。
「おー、またやってるな」
「お客さん、ここの店の関係者なんですか?」
「ええ、俺の実家なんです」
さて。母さんは元気かな。
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