キャンサーと出汁

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「良いなぁ。レッドくんはモテモテで。どうせ俺なんか、誰も相手にしてくれないよ」 青葉丈(アオバジョウ)。大きなバッグを背負い、壁に人差し指で小さな円をグルグルと描いている。 僕よりも二ヶ月前に、ニートから脱出するべくアルバイトを始めた二十二歳。 ……てか、青葉さん。あなたはいつからそこにいた? いつも突然現れては壁に向かってブツブツ、ブツブツ。 「そう言われてもねぇ、鏡子さん」 「そうですわねぇ、茉里ちゃん」 どういう訳か、青葉さんの一言は一時的に二人を仲良くさせる。
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