悪戯な夜更け

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「初めて乗るのかい?」 このバスにということだろう。 運転手の問いに黙ってうなずくと彼はじっと僕の顔を覗き込んだ。 「そうか、とりあえずうちのバスは料金後払いだから、まあ、とりあえず座って下さい」 軽く礼をしてバスの後部の方へと歩みだす。 「あと、言い忘れた」 運転手の声に振り向く。彼は急に思い出したかのようにこう言った。 「一番、後ろの席から順に詰めて座ってくださいね」 民間のバスであるのに座る席に指定があるのか。 少し意味深な指示でもあったが僕は特にそれについて疑問などをぶつけることはしなかった。座る席を指定されたところで後々に大きく関わってくるわけではあるまい。 そして僕は再び座るべき座席を目指して歩みを始めた。
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