悪戯な夜更け

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気がつくと逃げ場所を探していた。 何故だろうか、歩いてるだけで、呼吸をしているだけで、生きているだけで苦しくなってくる気がする。別に身体が不調だと言いたいわけじゃない。 低俗な現実世界性に溺れている自分が情けなくなって、心という容器がどうしようもないくらいのもどかしい感情で溢れそうになっていたのだ。 そして、気がつくと、真夜中に財布を持って自宅を飛び出している。行く先もなく歩いているといつも自分はここにいた。 深夜零時が過ぎようとしている駅前。一時間に一本程度の電車しか来ないような小規模な駅であるせいか、この時間帯は人影は一切見えたためしがない。 一歩一歩歩みを進める度に不確定なリズムで吐かれるため息は白い淀みとなって夜の闇を漂い、行き場を失っては世界に溶け込んでしまう。 そんな中僕は駅の出口の傍にある錆びた小さなバス停への前に立った。
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