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『うちが共働きで、お父さんが単身赴任。お母さんが夜勤専門の看護士だって山田さんも知ってますよね?』
顔を真っ赤にして口をパクパクと言葉無しで開け閉めしている千尋を見ながら、俺は昨日の真琴ちゃんの話を思い出していた。
『私、洗濯や掃除は好きなんですけど、料理はなんかダメで。台所関係は、昔からお兄ちゃんがしてるんです。』
『お兄ちゃん、お菓子作るのも好きで……、その道に進みたいみたいです。』
そう言われると、千尋が行くのは製菓料理専門学校だった。
『山田さんに上げていたお菓子は、私じゃなくて、お兄ちゃんが作ってたんです。』
自分からとは言えないから、私をダシにしてたんですよ、と、真琴ちゃんは笑った。
と、いうことは、だ。
俺は知らずして、2年前から千尋からの愛を受け取っていたことになる。
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