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陽良は迷わずそこへ駆け込んだ。
扉を開くとゴミは既に収集されていたが、つんとする生ゴミの臭気が暑気に蒸されて酷い事になっていた。
だけど、選び直す暇はもうない。
バタン、と扉を閉めて、ブロックで出来た壁の隙間から外を見る。
と、ふっ、と辺りが薄暗くなった。
見上げた空の上、雲は太陽を覆っていない。
―――「カテゴライジング」。
修復人の手によって、辺り一帯の空間が切り取られたのだ。
ごくり。
暑さのせいではなく、陽良は息を飲んだ。
(来た)
ふっ、と、何もなかった道路が歪む。
蜃気楼のように景色が歪んで、ぐにゃり、酔いそうになる。
一瞬だけ目を瞑って、そうして次に目を開いたその時には。
「……"シューター"……!」
夏の太陽のぎらぎらと強い陽差しをきらり、反射させて、赤い装甲スーツのその人が、すらりと佇んでいた。
「シューター……!シューターだ!!」
興奮に胸が躍る。
直線のスマートなラインが美しいマスク、曲線と直線の組み合わさったスタイリッシュなフォルムの装甲スーツ。
頭のてっぺんから爪先までを鋼鉄で鎧って、その人は佇んでいる。
"シューター"。
それは極東地域に配属された、SDOの"修復人"の愛称だった。
蹴り技を得意とし、その高々と振り抜いたキックがサッカーのシュートによく似ていた事から、そう呼ばれているのだ。
修復人は、装甲スーツに組み込まれた次元転換装置を使う。
そうして他次元生物と時には戦い、「穴」を修復する役目を負っていた。
あの、幼い夏の日に、陽良の目の前でそうしたように。
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