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―――そう、思った時だった。
「"カテゴライジング"!!」
鋭い、けれど朗とした力強い声が聞こえた、と思ったら、何だか周囲が薄暗くなった。
おかしいな、だって雲はまだ、太陽に差し掛かっていないのに。
ヒュ。
風を切る音がして、赤い一筋の閃光が、目の前を走り抜ける。
それはムカデのお化けの口元から、二本の牙をぽきり、と叩き折って、僕の目の前に降り立った。
「少年、何をぼさっとしている!!」
―――陽を反射して太陽のように煌めく、赤い装甲スーツ。
頭から爪先までをすっぽりと鋼鉄で包んだその人は、僕の身体をぐい、と押して叫んだ。
「下がって!!―――押し戻す!!」
ド、と鈍い衝撃が足元を揺るがした。
アスファルトの地面にひびを入れて、飛び上がったその人が、右脚を高々と振り上げる。
まるでサッカー選手の強烈なシュートのようなポーズで、ムカデモドキの顎を蹴り抜いた。
ギ、ギギギ。
鼓膜を嫌な感じに震わせる音は、ムカデモドキの口元から。
逃げるようにじり、と穴の中へ後退って行くのを、その人はもう一発、押し出すように蹴りを入れて後押しした。
「―――"レストレイション"!」
掛け声と共に、みるみる内に穴が塞がっていく。
ムカデモドキを飲み込んで、黒い点はきゅうきゅうと小さくなっていく。
「………………」
うすぼんやりとそれを眺めるしかなかった僕の喉が、その時、初めて、声を出した。
「……"シューター"……?」
赤いスーツのその人は、振り返ってピッ、とポーズを決めて見せた。
「ああ、俺が"シューター"だ」
それは幼い頃の記憶。
あの夏の暑さと共に、もうずっと忘れられずにいる、僕の一番の宝物。
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