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ミーン、ミーン、ミーン。 じーわ、じわじわじわ。 敷地内に植え込まれた、ちょっとした森のようになっている木々の間から、季節限定の騒音が高らかに響いている。 こめかみからつうっ、と汗が伝って、顎の辺りで嫌な点を結んだ。 「……あっつい……」 ミーン、ミーン、ミーン。 じーわ、じわじわじわ。 省電力にご協力を、というたった一枚の張り紙の元、クーラーの電源を切られた図書室はサウナもかくやという暑さだ。 いや、もうこれは暑い、を通り越して、熱い。 「言うなよ。余計暑くなる」 ぶすっ、とした口調でそう言われて、木島陽良(こじまあきら)は顔を上げた。 テーブルを挟んで向かい側には、同じゼミの友人、中村俊紀(なかむらとしき)がむっつりと顔をしかめて座っている。 「あのさ俊紀、付き合わなくていいんだよ?僕はもうちょっと、調べなきゃいけないからここにいるけど」 「それって急ぎなのかよ」 「いや、急ぎでもないけど。ゆっくりもしたくない」 「何だそりゃ」 ぶー、と子供のように唇を突き出している友人に、陽良はちょっとだけ笑った。 笑った拍子に、眼鏡の鼻当てがずれて汗がぽつり、落ちる。 「なあ、もういいだろー。今日はここまでにして、西館行こうぜ。アキちゃんたちが、プール行くって言ってたし」 そんな専門書より、むちむちぼいーんの水着だぜ水着! 途端に顔をにんまりと緩ませる。 年相応にだらしのない顔をした友人へ、陽良は小さく肩を竦めて嘆息した。 「……あのね俊紀、僕の言うこと聞こえてた?」 「聞いてるって。急ぎじゃねえんだろ?」 「でもゆっくりもしたくないんだよ」 だからむちむちぼいーんは、君一人で行ったらいいよ。
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