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「じゃあ何で追っかけ」 「んー……速度と距離の問題?」 訳わかんねえ、とふてくされたようにぎっ、と椅子を鳴らした友人に、陽良は笑って見せるしかない。 言えば、絶対に心配されると解っていた。 馬鹿な事をするなよ、と、何だかんだ言ってこの気の良い友人は、自分を止めるに違いない。 だけどどうしてもこれは必要だった。 自分には次元転移装置も、有り余る資金力もない。 「穴」が空いたと聞いて飛び出しても、それから駆け付けるのでは間に合わないのだ。 そう、彼らSDOの抱える「修復人」たちののように、距離を一瞬でなかった事になどできないのだから。 「まあ、これも無謀な賭けなんだけどね」 陽良はぼそりと呟いた。 それは完全に独り言の響きで、むくれる俊紀の耳には届かなかった。 「……まあ、何か解んねえけど。仕方ねえから待っててやる」 ぶすくれたままで、友人が言う。 デザインTシャツの襟元は汗が染みていた。何も、こんな事に付き合うことはないのに。 ―――やっぱり、何だかんだ言っても、この友人は人が良い。 「ありがとう。出たら奢るよ。フロストとジュースとどっちがいい?」 「水出しの緑茶にわらび餅」 「……渋いとこ来たね……」 じゃあ、なるべく早く終わらせるから。 そう言って陽良は手元にタブレットを引き寄せると、また真剣な面持ちで書籍をじっくりと読み込み始めた。 だから。 友人の目が、きらり、剣呑な光を弾いた事に、陽良はとうとう最後まで気付かなかった。  
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