よる☆かぜ

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宇田ヤンがりんご酢を飲み始めたのは、確か、去年の秋口だった。 健康志向の彼は、三年になると、とにかく色んなものに手を出した。 プロテイン、サプリメント… でも、飽きっぽい性格が手伝って、どれも長続きはしなかった。 りんご酢もその延長。 『ど~せまたすぐに飽きるな。』 と思っていた。 だから、上手そうに、 「やっぱこれだな!」 と紙パックをすぐ空にした彼を見て、思わず笑ってしまった。 「実際の所、それ飲んで健康になったの?」 苦笑気味に問えば、 「え?さあ?分かんね。」 肩をすぼめて言うものだから、無駄にニヤけてしまった。 いつの間にか、オレンジの道が途切れていた。 代わりに、周りは田んぼだらけになっていて、蛙たちの合唱が響いている。 夏らしくて、夜だけど、清々しい。 おまけに今夜は満月。 月の光も十分過ぎるくらいに降り注いで、田んぼに金の絵の具をぬる。 「あとどんくらい?」 「……知らん。」 「知らんて…調べろやー、助手席に座ってんだから。」 “ったく”と博之が呟いているのは分かった。 でも、答えられないほどに、この景色にみとれていた。
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