0人が本棚に入れています
本棚に追加
分かっていた。
分かっていたのだ。
でも、云わずにはいられなかった。
云わなければ、もう、私は私ではいられなかった。
震える指先も、微かに減った、シャープペンの芯も…
全てが私の気持ちだった。
そこに、嘘は一つもない。
……
「だから、何も言わなかったのかな……」
溜め息は、見知らぬ街の片隅に消えた。
鳴り続ける携帯も無視して、一人、ベンチに座る。
誰もいない公園は寂しい。
だから、空を見上げた。
雲一つない青は、どこか不思議な感覚がした。
吸い込まれそうで、閉じかけた目を大きく見開く。
閉じてしまえば、何もかもを見失ってしまいそうで。
それだけは情けなくて、できないと思った。
……
『……とにかく、追試だ。ちゃんと勉強しとけよ。』
『でも、間違いではないです。』
『……あのな~…』
『間違いなんかじゃないです。私にとっては正解なんです。』
『……テストの解答としては不正解だ。』
……
『聞いた?』
『聞いた。』
『あれってどこ発信?』
『なんか、3組の子達が見たらしいよ。手つないで歩ってたから、間違いないでしょ。』
『そっか~…やっぱ彼女いたのか~、残念。』
『残念って…そもそもダメでしょ?』
『え~?なんで~?』
『だって、教師と生徒だもの。』
……
最初のコメントを投稿しよう!