0人が本棚に入れています
本棚に追加
……
泣いた。
一生分とも思えるくらいに、泣いた。
ただただとめどなく、溢れてくる想いが嗚咽となって、静かな教会に響く。
黙っていた神父が言った。
「私は、彼女の決断は支持できません。でも、彼女がどのような答えを出したとしても、あなたはこうして泣いたでしょう。」
「でも、忘れないで下さい。彼女にとって、あなたは“港”でした。……だから、あなたがどんな生き方をしていこうとも、きっと、彼女があなたを忘れる日など、永遠にないでしょう。」
「そしてそれは……渋谷さん。あなたにも、言えることではないでしょうか?」
……
『秀人へ
何も言わずにいなくなって、ごめんね。
本当は、ずっとあなたの傍にいたかった。
でも、それは無理みたい。
あなたのこれからの幸せを考えた時、私はあえて、こうしようと思いました。
約束、果たせなくてごめんね。
でも、私は絶対に忘れないよ。
秀人がくれた優しさを、絶対に忘れない。
だけど、長い、長い人生です。
秀人は、私のことは忘れて下さい。
私はいなくなった人間だから、いつまでもあなたを独り占めになんかできない。
きっと、世界のどこかで、秀人を必要としている人がいるから…
…じゃあ…
お元気で…
こんなこと書くのもなんだけど。
色々と、秀人は納得できないこともあるだろうけど。
私が出した答えを、どうか、否定しないでね。
愛していました。
本当に、ありがとう。
浦和 葉月』
……
最初のコメントを投稿しよう!