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「キミの場合は……言わなくてもわかるでしょ?
別々の要因を組み違えたその結果が今のキミなんだから。まあ、わからなくはないよ。突発的な怒りに任せて呪いをした翌日、対象だったあの子は事故にあった。そりゃ、キミが原点だって考えてもおかしくない」
「……違うってのか」
「そういい切れたらワタシはここにいないよ」
予防線を張るような言葉。
……確かにそうだ。
今日、幼なじみが交通事故に遭った。意識は未だ戻らず昏睡状態が続いているだとか。
アホらしいと笑われるかもしれないが、僕はそれを自分のせいだと考えている。
昨日、喧嘩をしたんだ。
確かほんと些細なこと、今では思い出せない、その程度の原因だった。それでも煮え切らなかった僕は、やけっぱちな気持ちでいわゆる『呪い』とかいうものをやってしまった。ただの憂さ晴らしだったし、明日になれば謝るつもりだった。
……馬鹿らしいのはわかっている。だけど幽霊がいて、呪いがないなんてどうして言えるのか?
僕が、僕の意識が、僕の呪いが、事故を引き起こしたんじゃないのか?
「さて、もう一度聞くけどキミは今死にたい?」
答えられない。
そうだ、と返事をしたいのに口が固まって、喉が干上がって、犬笛でも吹くかのようにただヒューヒューと僕の呼吸だけが聞こえる。
「ふー、参ったな」
彼女は困った様子でポリポリと頭をかいた。
「最初から無いものを無いと証明するのはひどく骨折りなんだよ。宇宙を三周してもお釣りがくるくらい。
だから、これだけ言っておくよ。キミは悪くない。キミのせいじゃない。これは希望的観測なんかじゃないし、ましてやただの戯れ言だとか妄言だとかそんなものじゃないよ。確かに証明はできないし、そもそもワタシという存在自体が不確かだけど、これだけは絶対なの。
もう一度いうよ。キミは悪くない」
「でもっ、僕が!」
「もし呪いが本当にあるなら、ちょっと憂さ晴らしなんて覚悟じゃ起こせないよ」
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