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「わかっていたけど……やっぱり寂しいかな、忘れられるってのは」
川岸から遠ざかっていく人影を遠目に彼女はつぶやいた。
彼女に答えるかのように柳はさわさわと揺れる。
「ワタシが死んだとき、まだ幼稚園だったもんね。……そりゃ覚えてないか」
一段と明るい月光に掌を透かす。現実味のないこの体にもずいぶんとなれてしまったな、と感慨にふける。
嘘でも覚えてると言ってほしかった。
「そろそろワタシも行かなきゃね。ま、ワタシがこんなにも頑張ったわけだし、後は上手くやるでしょ。うん、そうじゃなきゃ困るね」
一人こくこく頷いた後、もう一度彼がいた場所を眺める。
「……もう誰もいない、か。それじゃ、また会う日まで――――我が親愛なる弟よ」
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