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それでも、美しい羽なんて持っていない私は奈落の底で力尽きるのを待つ術しか知らない。 施錠されていたロックが音を立てて開く。 私は鍵をバッグの中に仕舞うとドアノブに手を掛けた。 背後で、キュッと靴が通路の床を踏みしめる音が響いた。 僅かに動いた気配はこのまま私から遠ざかって行くんだ。 そう悟った瞬間、ちょっとだけ寂しさを感じた。 …もし、叶うのならば…。 私が室内に消えるまで、その気配を感じていたかった。 そうは思っても、それは私の身勝手な我儘に過ぎない。 私に別れを告げられたミケがいつこの場を立ち去ったとしても、それはミケの自由だ。 自分にそう言い聞かせながら私はドアを開いた。 その刹那――…。
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