29/40
前へ
/40ページ
次へ
「女の子は母親が望む進路【みち】を着実に歩んで行った」 「…」 「母親は娘を誇りに思い、女の子も母親が喜んでくれるのがとても嬉しかった。その頃は順風満帆だったんだと思う」 「…」 「だけど、全てが望み通りに進む人生なんてどこにもない」 「…」 私は静かに瞼を閉じた。 脳裏に浮かぶのはあの日の出来事。 まだ、寒さの厳しい季節だった。 朝から空にはどんよりと重たい灰色の雲が広がっていて、チラチラと真っ白い雪が舞い落ちていた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

319人が本棚に入れています
本棚に追加