TrueEpisode1【違和感】

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「……“お兄ちゃん”」  ボソッと、瑠璃が呟く。 「え?今なんて言ったの?」  しかし、慎にらそれが聞こえなかったようで再び瑠璃に尋ねる。  だが、 「い、いえ!なんでもないです!」  恥ずかしさから逃げるように、瑠璃は顔を俯けて何でもない素振りをしていた。  なんとも不器用な妹だろうと、兄貴の視点で思わず嘆息してしまった。 「(はぁ……相変わらずだな)」  もう察しの通りだと思う。が、敢えて確認のために言わせて頂きたい。  この妹、幼馴染みである慎に──。 「べ、別に頭を撫でられたって嬉しくもなんともないんだからっ!」  ベタ惚れである。  今でも鮮明に思い出す。幼少の頃から御堂家と結城家は親しい付き合いをしていて、当然と言うか必然と言うか、その子供たちも一緒に遊ぶ関係だった。  ちなみに俺は一度も妹に『お兄ちゃん』なんて可愛い声で呼ばれたことなどはない。よくて『秀一』とか『兄さん』とか『兄貴』だからだ。  だが、慎は違った。  幼い瑠璃はどこにいくでも慎の後ろをトコトコと着いていき、まだまだ舌足らずな声で『おにいちゃんまってー、るりと遊んでー』とか言っていた。  実兄を差し置いて幼馴染みを取るとは兄さん悲しいっ、とか小学生低学年の頃は思ってはいたが、月日が経つにつれつまらない嫉妬心も薄れていった。  まあ、呼び方なんてどうでもいいのだが。  これだけ長々と話して自己完結かよっ、と突っ込んでも構わない所存です。 「あ……ゴメン、嫌だった?」  しゅんと、幼馴染みに叱られて肩を落とす慎。
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