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慎も慎で、瑠璃のことを大事な“妹”だと思っている。故に、冷たくされたら当然の如く落ち込んでしまう訳で。
「や、その……イヤ、じゃないけど」
しどろもどろに言葉を漏らす瑠璃。歯切れの悪い彼女の言い方は逆に慎の心にさらに追い討ちをかけていた。
「……いや、無理しなくていいよ。瑠璃ちゃんをいつまでも子供扱いした僕が悪いんだ……死んで詫びます、止めないでください」
『冗談でも止めて!!』
俺と瑠璃の声と心が重なった瞬間だった。
やはりというか予想通りというか。瑠璃は慎を前にするとつい本心とは逆の言葉を放ってしまうらしい。
結果、意外と心の弱い慎は毎回の如く落ち込んで詫び(自殺)しようとする。
なんて精神が崩れやすい男だよ、ったく。
「しっかりしろって、瑠璃も本音は違うんだからさ────」
だから元気出せよ──と。俺が肩に手を置きながら慰めようとした直後だった。
「──準備完了!!待たせてゴメンね慎くん!!」
“あの方”が現れたのは。
その瞬間、場の空気が張りつめるのを俺はひしひしと感じていた。加え、この後に勃発するであろう“悶着”にも。
満面の笑顔で慎を呼ぶ彼女こそ、俺と瑠璃の“幼馴染みその二”
神様が基本設定を間違えて、人類最強の力を与えてしまった規格外の慎の姉。
「にゅふふ、慎くんとのデート楽しみっ!!」
【御堂 漆】がそこにはいた。
彼女が慎を視界に捉え、偶々(たまたま)“俺たち兄妹”をも視界に入れてしまったのと、
「……へぇ、【結城】さんとこの瑠璃ちゃんじゃない」
「あらあら、ご機嫌よろしいことで“お義姉様”」
両者の火花が散ったのは同時だった。
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